研究紹介
update 2011/Nov/19

大質量星はどこで生まれたのか?「暴走星」が明らかにする星の故郷

概要

スーパーコンピュータを用いたシミュレーションにより、銀河内の暴走星(注1)の起源が若い星団(注2)であることがわかりました。星団の中心では、連星(注3)が周りの星を高速で星団の外へ弾き出し、暴走星を生み出します。シミュレーションによって示された暴走星の質量の分布は、観測された暴走星の質量分布とよく一致しました。これは、大質量星の多くが比較的小さくて、非常に高密度の星団の中で生まれ、銀河内に散らばっていったことを示しています。この発見は、銀河内の星の形成過程の解明に向けて、極めて重要な成果と言えます。

この研究成果は、アメリカの科学誌Science電子速報版2011年11月17日に掲載されました。


提供:国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト(4D2U)
アニメーション(mpeg, 1.4MB)

用語解説:
注1:暴走星 (runaway star)
周りの星の速度に対して秒速30キロメートル以上速い速度を持つ星

注2:星団
数百から数十万個の恒星がお互いの重力で引かれ合うことによって作られる星の集団

注3:連星
重力によって束縛され、共通の重心のまわりを回転している2つの星



研究の背景

 我々の銀河(銀河系)では、「暴走星(runaway stars)」と呼ばれる、周りの星と比べて非常に高速で運動している孤立した星が数百個見つかっています(図1左)。この暴走星は大質量星に多く見られ、最も重い星(太陽の約20倍以上)の約2割が暴走星です。星が暴走星となるためには何かによってその星が加速される必要があり、それを明らかにすることで、暴走星はどこで生まれたのかを知ることができます。また、暴走星でない大質量星のほとんどは星団などの星の集まりに付随しているため、暴走星の故郷が星団であるとわかれば、大質量星は星団で生まれたという仮説の有力な根拠となります。

 暴走星を生み出す仕組みとして、これまでに2つの説が考えられています。1つは、「連星の一方が超新星爆発を起こした結果、もう一方の星が高速で飛びだす」というものです。しかし、この説は観測結果と合致しませんでした。暴走星を生み出すもう一つの仮説は「若い星団の中にある連星」です。星団は力学的に進化すると中心の星の密度が非常に高くなり、星同士の重力相互作用の結果、お互いの重力で強く束縛された連星ができます。この連星に他の星が近付くと、それまで周期的な軌道運動をしていた連星は不安定となり、最終的に三個の星のうち一つが高速で星団の外へ弾き出され暴走星となります。

図1(左) 大マゼラン雲のタランチュラ星雲内の若い星団「R136」とR136から生まれた暴走星。右下の枠内は暴走星の拡大図。星団はこのようなガスの雲の中で生まれる。Credit:NASA, ESA, J. Walsh (ST-ECF)
(右) R136の拡大図 Credit: NASA, ESA, F. Paresce (INAF-IASF, Bologna, Italy), R. O'Connell (University of Virginia, Charlottesville), and the Wide Field Camera 3 Science Oversight Committee

研究結果

 今回、国立天文台とライデン大学のスーパーコンピュータを用いたシミュレーションにより、暴走星の起源は若い星団であることがわかりました。星団のシミュレーションによって生み出された暴走星の質量分布は、実際に観測されている銀河系内や大マゼラン雲のタランチュラ星雲内にある「R136」という非常に若い星団(図1右)の周りにある多くの暴走星の質量分布(大質量星が多い)と非常に良く一致しました(図2)。

 星団には大質量星を星団外へ弾き出すメカニズムがあります。星団が力学的に進化すると、星団の中心には大質量星が集まります。星団の中心で生まれた連星は自分の周りの星を高速で星団の外へ弾き飛ばすため、弾き出された星にも大質量星の割合が高くなります。さらに、シミュレーション結果は、銀河内の暴走星はR136よりも小さめの星団で生まれたことを示しました。


図2星の質量ごとの暴走星の割合(シミュレーションと観測の比較)。 赤線、青線はシミュレーションの結果を示す。黒い四角形は若い星団であるR136の周りで見つかっている暴走星の星団内の星に対する割合、銀河系で見つかっている暴走星の割合を示す。銀河系の暴走星は小さめの星団(太陽の約6千個分の質量)、R136の暴走星は若い星団R136(太陽の約5万個分の質量)をモデルとしたシミュレーションの結果と一致する。

成果の意義

 今回の結果は、銀河系の大質量の暴走星が星団で誕生したということを示しています。この結果は、大質量星のほとんどが星団で生まれたことを示唆しており、未だ謎の多い大質量星や星団形成に迫る重要な成果であると言えます。


論文

The Origin of OB Runaway Stars
Michiko S. Fujii & Simon Portegies Zwart
Published Online November 17 2011
Science DOI: 10.1126/science.1211927


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